日本最北の酒造 国稀酒造「吟風国稀」
★国稀酒造ができるまで
国稀酒造の歴史は古く、創業は明治15年です。
増毛で呉服店や荒物雑貨販売、ニシン漁など幅広い事業を行っていた創業者の本間泰蔵は、
醸造業にも手を広げ、知人に酒屋がいて知識があったこともあり、自家醸造に至ったとされています。
旧本店は現在の「旧商家丸一本間家」(増毛郡増毛町)でした。
20年に渡り酒造りを行っていましたが、酒の需要が増えると生産が追いつかず、
明治35年に現在の場所に酒造を建設し拠点を移しました。
同じ年に合名会社となり長年営業した後、合名会社設立から100年の節目にあたる平成13年に「国稀酒造株式会社」と社名を変更。
現在に至ります。旧本店の「旧商家丸一本間家」は国の重要文化財にも指定され、
今も100年前と変わらぬ姿で建っています。中を見学することも可能で、現代に歴史を伝える役割を担っています。
また、「国稀」という社名、代表銘柄の名前は当時の陸軍大将・乃木希典の名前にちなんで名づけられたと言います。
国稀酒造を立ち上げた本間泰蔵がその人柄に感銘を受け、当時「国の誉」だった酒名を「国稀」とし、
定番の商品名としてリリースしました。
「希」の字をそのまま使うのはおこがましいと考えた本間泰蔵が「のぎへん」をつけて「稀」とし、「国に稀な良いお酒」という意味も込めたと言われています。
★吟風国稀
酒造りに欠かせないお米と水は、味を大きく左右する大事な原料です。
国稀酒造で使用している水は、冬の積雪量も多く初夏でも残雪の多い暑寒別岳(しょかんべつだけ)連峰から流れ出る清らかな伏流水。
お米は「吟風」という北海道産としては2番目に出来上がった酒造好適米です。
酒造された酒の味の丸さ、柔らかさが好評価を得て、本州産の代表的な酒造好適米に肩を並べる高い酒造適性を持つとされています。
「吟風国稀」は「吟風」を65%まで磨き、南部杜氏の伝統の昔ながらの確かな技で醸しています。
純米酒ならではのコクを持ちながら後味は爽やか。北海道ならではの瑞々しい味わいで料理を引き立てるお酒です。
淡麗な中辛口はすっきり飲めるという声も多く上がっています。
日本酒造りは長い時間と大変な労力を必要とします。ひとつひとつの工程を丹念に行っているからこそ、確かな品質の吟風国稀が生まれるのです。
1洗米・浸漬(しんせき)
白米の表層に残っている糖分を取り除くために水洗いし、次に水に浸します。
蒸した時に完全な蒸し米にするために、米粒の中心まで十分に水を吸収させる必要があります。
浸漬時間は普通酒は1~2時間ほど、吟醸酒は数分と米粒の組成によって変わってきます。
2蒸し
浸漬が済んだお米は、一晩おいて表面の水分を飛ばしたら、甑(こしき)という大釜で蒸し上げます。
蒸すことによって麹菌が繁殖しやすくなるのです。
40分~60分蒸すと適度な硬さと弾力になり、手で引き伸ばすと餅状に。
蒸し上がったら最も麹菌が増殖しやすい温度になるまで手でほぐしながら広げて冷ましに入ります。
造りの時期には、蔵には早朝から甑に火が入れられ、立ち上る蒸気は酒造の風物詩となっています。
3麹造り
麹カビが育ちやすい環境にするために、麹室の温度は30度前後、湿度は高めに保たれます。
台の上に先程の蒸し米を広げたら、水分を蒸発させた後に種麹の植え付けをします。
麹菌の胞子を全体にまんべんなく散布し、蒸し米を山にして布をかけて保温します。
ここからは、細かに手を入れなければいけない作業が続きます。
保温から12時間後に切り返しをしたら再び山に。
さらに6~8時間経ったら麹蓋という木の箱に移して麹室に積み上げます。
この後も、温度・湿度を調節するために何度も麹蓋を入れ替え、カビの成長により発生する炭酸ガスを除くために2~3時間おきに手でもんでほぐします。
決して楽な作業ではありません。
これを繰り返すこと2日、米粒が麹カビによって白っぽくなってきます。
4酒母(しゅぼ)
ここからは、いよいよタンクでの仕込み作業が始まります。
お酒の元、つまり酒母を作ります。
これはアルコール発酵に必要な酵母を増やすため。
多量の乳酸で雑菌から守りながら強い酵母をたくさん作り、この後の大きいタンクでの仕込みでも活発に働けるようにするのです。
だんだんと量を増やしながら大きいタンクでの仕込みへと進んでいきます。
5醪(もろみ)
仕込みタンクに酒母、麹、蒸し米、水を加えて醪を仕込みます。
麹や蒸し米は一気に加えず日を追って三回に分けて加えるのが日本酒独特の技法で、
これは雑菌の汚染を防ぎ、発酵をスムーズに進めるための工夫です。
定期的に木のかくはん棒で混ぜて発酵の手助けをします。
発酵が進むにつれてプツプツと小さな泡が立ち始め、発酵後半にはフルーツのような爽やかな香りが広がってきます。
20~30日で熟成醪となり醸造されます。なお、大吟醸は40~50日以上醸造されます。
6上槽(じょうそう)
しぼりの段階に入ります。
圧搾して酒と酒粕に分けます。圧搾機で搾ると黄金色の原酒が!豊かな香りが漂います。
ここで初めて清酒が誕生します。
7滓引き(おりびき)
搾りたての酒は米粒の破片、酵母などが混じっています。
そのため、涼しい場所に置いて滓を沈殿させてからろ過して濁りを取ります。
8火入れ・貯蔵
搾ってから2か月ほど熟成させたら、65℃前後に加熱し殺菌。
貯蔵タンクに移して半年~1年ほど熟成させます。
9瓶詰め
最後の工程です。
異物が混じっていないかといった厳しいチェックが済んだら出荷されていきます。
全ては杜氏さん、蔵人さんたちの努力の賜物。
大変な作業があっての美味しさなのですね。
★あのダルビッシュ有投手も大ファン
国稀酒造のファンである、アメリカ大リーグ・ドジャースのダルビッシュ有投手にちなんだ特別純米酒が限定発売され、話題を呼んでいます。
インスタグラムで国稀を「一番好き」と紹介したこともあるほど愛飲しているダルビッシュ投手自らが発案しました。
プロ野球時代に北海道日本ハムファイターズに在籍していたことで、北海道とつながりのあるダルビッシュ投手。
当時の背番号11と投球フォームをデザインしたラベルで、背番号にちなみ2017年11月11日午前11時11分から1111本販売。
ダルビッシュ投手と国稀酒造の力のいれようが分かりますね。
裏のラベルにはシリアルナンバーも印字されており、ダルビッシュ投手には「00011」の瓶が送られたそうです。
国稀酒造にはまだまだ美味しくて魅力的なお酒がたくさん。
「吟風国稀」と同じ純米酒では清々しい味わいの「国稀純米 ひやおろし」、華やかな香りとコクがある「純米吟醸 最北の蔵」、純米ならではの重厚な太さと特有の香味を持った「北のきらめき」など。
また、ほんのりフルーティーな香りが食事を引き立てる「純米吟醸 あかね雪」、飲みやすい、やや辛口の純米酒「暑寒のしずく」といった地元限定品、期間限定品も販売されています。
国稀酒造では酒蔵を見学することができます。
1902年に建てられた趣のある酒蔵では現在でも酒造りが行われ、日本酒の香りが漂う蔵内には売店や資料室なども並びます。
さらに吟風国稀を始めとする全16種類のお酒を無料で試飲できる利き酒コーナーもあり、地元限定酒なども味わうことが出来ます。
歴史を感じながら地酒を一口、といった贅沢なひと時を過ごせそうですね。
北の大地ではさらに美味しい酒を求めて、日々酒造りが続いています。
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