ケタ違いの甘さを秘めた“幻の玉ねぎ” 札幌黄

北海道の県庁所在地であり人口も多く大都市となっている札幌市では、農業も昔から盛んに行われています。
札幌市東区で栽培されている「札幌黄」(さっぽろき・さっぽろきい)は幻の玉ねぎとも呼ばれ、
他の玉ねぎとは比べ物にならない独特の甘さで今注目を集めています。

★再ブレイクのきっかけは「地産地消」

日本で初めて玉ねぎの栽培が始まったのが札幌村(現在の札幌市東区)です。
札幌黄は明治4年に欧米から輸入した種子を栽培したのが最初とされている歴史ある玉ねぎ。
札幌村の肥沃で風が強く乾燥しやすい土地が玉ねぎ作りに適した環境だったことから、その後作付量は急激に増えました。
札幌村は有数の玉ねぎの産地になり、昭和40年代には生産の最盛期を迎えます。
しかしそのピークも束の間、昭和50年ごろになると病気に強く品質が安定している
「F1種」(一代交配種)が登場したことにより、札幌黄を生産する農家が減り生産量は激減。
札幌黄は人々から忘れ去られてしまいました。
そんな札幌黄が再び脚光を浴びるきっかけとなったのが近年高まった「地産地消」の運動です。
札幌黄を絶やすまいとして細々と生産を続けていた農家があったおかげで、また人々に愛される存在になったのです。

★加熱するとさらに甘さがアップ

札幌黄の特徴は何といってもその甘みです。
一般的な玉ねぎの糖度が10度前後なのに比べて、札幌黄は13度。
北海道の夕張メロンの特秀(最上ランク)が13度以上ですから、その甘さが伝わるかと思います。
そして加熱すると辛味が消えて甘みがさらに増します。
驚くことにその糖度はなんと30度!
フルーツの中でも特に甘いとされる巨峰でも高いもので糖度約20度なので、フルーツ以上の糖度なんです。
また、他の玉ねぎよりも肉厚で柔らかく、甘みと辛味のバランスがいいことも特徴です。
しかし病気に弱く、形が安定しないこと、
日持ちしないことから生産量は少なく市場にもあまり流通していません。
ずば抜けた甘みとその入手のしづらさから“幻の玉ねぎ”と言われています。
札幌黄の甘みに惚れこんだ人は多く、市内では札幌黄を使用している料理店がいくつもあります。
「玉ねぎは絶対に札幌黄」というお店もあるほど。
甘みと辛味のバランスの良い札幌黄は、料理に向いた魅力的な食材だとシェフは言います。
特に向いているのが煮込み料理。カレーやポトフ、ビーフシチュー、スープカレーなどがおススメ。
フジテレビの「ホンマでっかTV」では、北海道出身の大泉洋が札幌黄を使った「北海道オムライス」のレシピを紹介。
魅力をアピールするとともにその味を絶賛しました。

★魅力をより多くの人へ

2007年に“食の世界遺産”と言われる「スローフード協会国際本部(イタリア)」の「味の箱舟」(その地方の伝統的かつ固有は在来品種のうち、消えてしまう可能性のある希少な食材を世界的な基準で認定。
地域における食の多様性を守るためのプロジェクト)に認定された札幌黄。
札幌市がPRのために1週間、札幌黄を取り扱う飲食店、スーパー、八百屋などにのぼりを掲げてアピールする「札幌黄ウィーク」を開催しているほか、「札幌黄ふぁんくらぶ」という札幌黄の魅力を発信している機関も登場し、より多くの人に手に取ってもらいたいという地元の期待も高まっています。
札幌黄は収穫量が少ないことから流通時期が限られており、9月上旬に収穫を迎えると9月下旬ごろ~2月頃の期間のみ流通します。
フルーツを超える甘みを持つ奇跡の玉ねぎ、それが札幌黄です。

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